【ISTQB /JSTQB AI Tester 解説】AIシステムと従来システムの違いとは?AI技術の種類と実例で学ぶ

JSTQB AI Tester

AI(人工知能)という言葉を耳にしない日はありませんが、「AIシステム」と「従来型システム(Conventional Systems)」の違いを明確に説明できる人は意外と少ないものです。

本記事では、ISTQB AI Tester Foundation Levelのシラバス第1章「Introduction to AI(AIの基礎)」から、「1.3 AIベースと従来型システムの違い」および「1.4 AI技術(AI Techniques)」の内容を、具体例を交えてわかりやすく解説します。


1. 従来型システム(Conventional Systems)とは?

まず、従来型システムとは、人間が明示的にルールをプログラムしたソフトウェアのことを指します。

たとえば、次のような命令構造をもつプログラムです。

if (temperature > 30) {
turnOnAirConditioner();
} else {
turnOffAirConditioner();
}

このようなプログラムは、「if-then-else(もし~なら~する)」やループ構文を使って構築され、人間がすべての条件や処理手順を定義します。

開発者が入力から出力までの処理の流れを完全に把握しており、予測可能で説明可能です。

使用される言語には、Java・Python・.NET などの**命令型言語(Imperative Languages)**が含まれます。


2. AIベースシステム(AI-based Systems)とは?

一方でAIシステムは、人間がルールをすべて書くのではなく、データの中のパターンを学習して判断します。

● 基本の考え方

  • ルールを直接書かない

  • 大量のデータを読み込み、そこに潜むパターンを学ぶ

  • そのパターンをもとに、新しいデータに対して予測や分類を行う

つまり、「教える」のではなく、「学ばせる」というのがAIの特徴です。


3. 具体例:猫の画像を識別するAI

たとえば、AI画像認識の典型的な例として「猫を見分けるAI」があります。

  1. 学習フェーズ

     50枚の「猫の画像」をAIに見せて、「これが猫だよ」と教える。

  2. 特徴の抽出

     AIは、耳の形・毛の模様・目の大きさなどの共通パターンを自動的に学ぶ。

  3. 推論フェーズ

     51枚目に新しい猫の画像を見せると、AIは過去の学習をもとに「これは猫だ」と判断できる。

このように、AIは**“ルールを自動的に発見する”**のです。

一方で、なぜそのような判断をしたのかを人間が理解するのは難しいという特徴があります(=ブラックボックス化)。


4. 身近なAIの例:reCAPTCHA(「私はロボットではありません」)

Googleのログイン画面などで表示される、「横断歩道を含む画像をすべて選んでください」といったチェックを見たことがあるでしょう。

あれはAIのトレーニングに使われている実例です。

  • システムは過去に「横断歩道」「橋」「バス」などを数百枚単位で学習しています。

  • ユーザーが正しく画像を選択することで、AIはさらに学習を進め、認識精度を高めていきます。

  • もし選択を間違えると、AIは「学習が不十分」と判断し、再度画像を提示します。

このように、AIは人間のフィードバックを通じて少しずつ賢くなるのです。


5. AIと従来システムの比較表

項目

従来型システム

AIベースシステム

開発方法

人間がルールを明示的にプログラム

データからパターンを学習

言語

Java, Python, .NETなど

Python, R, TensorFlowなど

処理内容

決まった手順を実行

学習結果に基づいて判断

予測の仕組み

完全に人間が制御

システムが自動的にパターン認識

理解のしやすさ

高い(透明)

低い(ブラックボックス)

応用例

計算機、家計簿、管理システム

音声認識、画像認識、自動運転

6. 「AIエフェクト(AI Effect)」とは?

AI Effectとは、「人々が“AI”と感じる境界が時代とともに変わる」という現象のことです。

かつてはAIと呼ばれたものも、今では「普通の技術」と見なされることがあります。

たとえば:

  • かつてAI扱いだった「チェスAI」は、今では単なるアルゴリズム。

  • 音声認識も、今ではスマートフォンに当たり前に搭載。

つまり、「AIとは何か」という定義自体も、技術の進化とともに変化していくのです。


7. AI技術(AI Techniques)の種類

AIを実現するための主な技術には、次のようなものがあります。

● 推論・探索系技術

  • Fuzzy Logic(ファジィ論理):あいまいな判断を扱う(例:温度が「少し高い」など)

  • Search Algorithms(探索アルゴリズム):最短経路探索や最適解を見つける(例:Google Maps)

  • Rule Engines(ルールエンジン):条件と結果を知識ベースとして処理する

● 機械学習系(Machine Learning Techniques)

  • Neural Networks(ニューラルネットワーク)

     脳の神経構造を模したモデル。画像・音声認識で使用。

  • Bayesian Models(ベイズモデル)

     確率論を用いた推定。スパムフィルタなどに応用。

  • Decision Trees(決定木)・Random Forests(ランダムフォレスト)

     条件分岐の木構造でデータを分類。説明性が高い。

  • Regression(線形回帰・ロジスティック回帰)

     数値予測や二値分類に使われる。

  • Clustering(クラスタリング)

     似た特徴を持つデータを自動でグループ化。

  • Genetic Algorithms(遺伝的アルゴリズム)

     進化の原理を模した最適化手法。

  • Support Vector Machine(SVM)

     データを分類するための数学的手法。画像認識などで利用。

多くのAIシステムは、これら複数の技術を組み合わせて構築されています。


8. まとめ

ポイント

内容

AIは「ルールを学ぶ」システムであり、人間が「ルールを書く」従来型とは根本的に異なる

AIはデータのパターンを基に予測・分類を行うため、人間には理解しづらい結果を出すこともある

AI技術は多岐にわたり、機械学習・ファジィ論理・ルール推論などが組み合わされて使われる

AI Effectにより、AIの定義は常に進化し続けている

次回の記事では、**AIモデルのトレーニング方法(MLモデルの学習プロセス)**を具体的に解説していきます。

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