【ISTQB /JSTQB ALTM 3.0解説】モデルベースのテストプロセス改善とは?|TMMiとTPI Nextの違いをわかりやすく解説

JSTQB Advanced Level Test Management 3.0

ソフトウェアテストの品質を高めるためには、単にテストケースの数を増やすだけでは不十分です。

**「良いテストは、良いプロセスから生まれる」**という考えのもと、多くの企業が自社のテストプロセスを継続的に改善しています。

今回は、ISTQB Test Managementの章「1.5 Improving the Test Process」から、

**1.5.2 Model-Based Test Process Improvement(モデルベースのテストプロセス改善)**をわかりやすく解説します。


モデルベースのテストプロセス改善とは?

「モデルベースのテストプロセス改善(Model-Based Test Process Improvement)」とは、

**業界標準の成熟度モデル(Maturity Model)**を用いて、組織のテストプロセスを段階的に改善していく手法です。

たとえば製造業における「品質マネジメント(ISO 9001)」のように、

ソフトウェアテストにも「優れたテストプロセスとは何か」を定義したモデルが存在します。

代表的なモデルは以下の2つです:

  1. TMMi(Test Maturity Model Integration)

  2. TPI Next(Test Process Improvement Next)

これらは「どの部分を改善すべきか」を明確にし、改善のロードマップを提示してくれる指針のようなものです。


なぜモデルベース改善が重要なのか?

内部的な改善(例:PDCAやIDEALモデル)も有効ですが、

それだけでは業界のベストプラクティスとズレてしまう可能性があります。

モデルベースの改善では、

**「業界標準との比較」**ができるため、自社の強み・弱みを客観的に評価できます。

たとえば:

  • プロジェクトAでは「テスト計画はしっかりしているが、欠陥管理が弱い」

  • プロジェクトBでは「テスト設計の品質は高いが、メトリクスが未定義」

といった形で、改善ポイントを具体的に特定できます。


TMMi(Test Maturity Model Integration)とは?

TMMiは、テストの成熟度(Maturity)を5段階で評価するモデルです。

元々はCMMI(Capability Maturity Model Integration)を補完する形で作られましたが、現在は独立して広く利用されています。

TMMiの5つの成熟度レベル

レベル

名称

状況の例

1. 初期(Initial)

プロセスが未整備。個人任せで属人的なテスト。

2. 管理(Managed)

テスト計画やプロセスが一定のルールに基づく。

3. 定義済み(Defined)

組織全体で標準化されたテストプロセスが存在。

4. 測定(Measured)

メトリクスに基づきプロセスを定量的に改善。

5. 最適化(Optimized)

継続的改善が文化として定着している。

具体例:

例えば、ある自動車メーカーのソフトウェア部門では、

当初「バグ修正は場当たり的」だった状態(レベル1)から、

不具合傾向を定量的に分析し、再発防止策を継続的に実施(レベル4〜5)に進化したことで、

品質改善と工数削減の両立に成功した事例があります。

TMMiは組織レベルでの品質改善に適しており、

テスト戦略、プロセス標準化、品質文化の定着に強みを持ちます。


TPI Next(Test Process Improvement Next)とは?

TPI Nextは、より現場(プロジェクト)レベルにフォーカスした改善モデルです。

TMMiが「組織的な成熟度」を評価するのに対し、TPI Nextは

個々のプロジェクトのテストプロセスを細かく評価します。

TPI Nextの特徴

  • 16の「重要領域(Key Areas)」で評価

  • 各領域は4段階(初期、管理、定義、最適化)で評価される

  • 結果を「マチュリティマトリクス(Maturity Matrix)」で可視化

主な評価領域の例:

  • テスト戦略

  • テスト組織とコミュニケーション

  • 見積りと計画

  • メトリクス管理

  • 欠陥管理

  • テスト環境・ツール

  • テスト設計技法・テストベース

  • テスターの専門性(Tester Professionalism)

各領域は「A〜D」評価(Dが最も成熟)で表されます。

これにより、プロジェクトごとの弱点をピンポイントで把握可能です。


TMMiとTPI Nextの違い

比較項目

TMMi

TPI Next

主な対象

組織全体

各プロジェクト

レベル数

5段階

4段階

評価単位

プロセス全体の成熟度

16の評価領域

強み

組織的改善・標準化

実践的改善・柔軟性

適用例

大企業や長期プロジェクト

個別製品や短期開発プロジェクト

どちらを採用すべき?

  • 組織全体の品質文化を整えたい場合TMMi

  • プロジェクトごとに現場改善を進めたい場合TPI Next

多くの企業では、

まずTPI Nextでプロジェクト単位の改善を進め、

その成果をもとに組織全体の成熟度(TMMi)向上へとつなげています。


まとめ:テストプロセス改善は“文化”として根付かせる

モデルベースのプロセス改善は、「チェックリスト」ではなく「文化」です。

TMMiやTPI Nextの導入により、組織は単に効率化を目指すだけでなく、

「品質を最優先する文化」を定着させることができます。

品質向上の第一歩は、自分たちの現状を“見える化”すること。

あなたの組織は今、どのレベルにいますか?


参考リンク

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