自動車ソフトウェアの安全性を確保するために、**ISO 26262(道路車両の機能安全規格)**は非常に重要な役割を果たします。
この記事では、ISTQB Automotive Software Tester シラバス第2章「2.2.3 Structure and Test-Specific Parts of the Standard(標準の構造とテスト関連部分)」の内容を、わかりやすく整理して解説します。
🔹 ISO 26262とは?
ISO 26262は、自動車における電子・電気(E/E)システムの機能安全を扱う国際規格です。
この規格は、開発のあらゆる段階で安全を考慮するための枠組みを提供しています。
🔹 ISO 26262の全体構造(全10巻)
ISO 26262は、**10のパート(Volumes)**で構成されています。
それぞれのパートには異なる目的と対象範囲があります。
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パート |
名称 |
主な内容 |
|---|---|---|
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Part 1 |
Vocabulary(用語集) |
ISO 26262全体で使用する専門用語・定義 |
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Part 2 |
Management of Functional Safety(機能安全マネジメント) |
安全管理体制、責任分担、組織の安全文化 |
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Part 3 |
Concept Phase(コンセプト段階) |
機能安全コンセプト、安全目標の策定 |
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Part 4 |
Product Development at the System Level(システム開発) |
システムレベルでの安全要求、検証、妥当性確認 |
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Part 5 |
Product Development at the Hardware Level(ハードウェア開発) |
ハードウェア安全設計、検証活動 |
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Part 6 |
Product Development at the Software Level(ソフトウェア開発) |
ソフトウェア設計・実装・検証 |
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Part 7 |
Production and Operation(生産・運用) |
製造・運用・保守プロセスにおける安全管理 |
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Part 8 |
Supporting Processes(支援プロセス) |
検証活動、ツール認定、文書管理などの共通プロセス |
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Part 9 |
ASIL-oriented and Safety Analysis(ASILと安全解析) |
安全度レベル(ASIL)の定義、HARA、FMEA等 |
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Part 10 |
Guideline on ISO 26262 Application(適用ガイドライン) |
実際の適用を支援するためのガイド・補足情報 |
👉 覚えておくべきポイント:
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Part 1とPart 10は**情報提供的(informative)**なパートで、試験問題には直接出題されません。
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それ以外のパート(2〜9)は**規範的(normative)**であり、実際の開発・テスト活動の指針を示します。
🔹 各パートの共通構成
ISO 26262の各パートは、ほぼ同じ章立て構成を持っています。
これにより、どのパートを参照しても似た流れで理解できます。
一般的な構成:
-
目的(Objective)
→ このパートで何を達成するかを定義。
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序文(Introduction)
→ 背景情報・関連性の説明。
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適用範囲(Scope)
→ このパートがどの工程・対象に適用されるか。
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参照文献(Normative References)
→ 他の規格や関連ドキュメントの引用。
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要求事項(Requirements)
→ 遵守が求められる具体的なルール・実施事項。
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推奨事項(Recommendations)
→ 適用を強く推奨するベストプラクティス。
-
成果物(Work Products)
→ 作成・保存すべき文書や証拠(例:安全計画、検証報告など)。
🔹 テスターに関連する重要パート
テスターにとって特に関連が深いのは、以下の5つのパートです。
|
関連パート |
レベル |
主な内容・目的 |
|---|---|---|
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Part 1 |
全体 |
用語や定義を理解するための基礎知識 |
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Part 4 |
システムレベル |
システム全体の安全検証・妥当性確認 |
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Part 5 |
ハードウェアレベル |
ハードウェアテスト・HW/SWインターフェース検証 |
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Part 6 |
ソフトウェアレベル |
ソフトウェア検証・単体テスト・統合テスト |
|
Part 8 |
支援プロセス |
検証・レビュー・ツール認定・文書化要件など |
💡 テスターの観点からの具体例:
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Part 4(システムレベル)
→ 例:システム安全要求に基づく統合テスト、車両レベルでの安全機能検証
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Part 5(ハードウェアレベル)
→ 例:センサー異常時の安全動作検証、電子制御ユニット(ECU)の故障注入テスト
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Part 6(ソフトウェアレベル)
→ 例:ユニットテスト、コードカバレッジ測定、ソフトウェアASIL対応テスト
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Part 8(支援プロセス)
→ 例:テストツールの妥当性確認、テスト結果の文書化とトレーサビリティ確保
🔹 テスターが押さえるべきISO 26262パートのまとめ
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フェーズ |
対応パート |
テスターの主な関与 |
|---|---|---|
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コンセプトフェーズ |
Part 3 |
安全目標の理解、テスト計画の初期化 |
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システム開発 |
Part 4 |
検証・妥当性確認、リスクベースドテスト |
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ハードウェア開発 |
Part 5 |
HSI(HW/SWインターフェース)テスト |
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ソフトウェア開発 |
Part 6 |
単体テスト、統合テスト、コード品質検証 |
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支援プロセス |
Part 8 |
ツール認定、文書化、レビュー、トレーサビリティ |
🔹 まとめ
ISO 26262の理解は、自動車ソフトウェアテストにおける安全性確保の出発点です。
特にテスターは、Part 4・5・6・8を重点的に理解することで、
実務に直結する「安全を裏づけるテスト活動」を実践できます。
📘 学習ポイントチェックリスト
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ISO 26262は10パート構成である
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Part 1とPart 10は情報提供用で試験出題対象外
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テスターに重要なパートは 4, 5, 6, 8
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各パートは同じ章立て構成(目的・範囲・要求事項・成果物)
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Part 8ではツール認定や文書管理も対象


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