Chapter 5.4:Configuration Management(構成管理)
この記事では、ISTQB Foundation Level シラバスの第5章「テスト活動の管理(Managing the Test Activities)」の中でも、特に重要なテーマである 構成管理(Configuration Management) について詳しく解説します。
テスト計画・設計・実行を行ううえで、テスト成果物を「正確に」「一貫して」管理する仕組みがなければ、品質保証は成立しません。その中心にあるのが「構成管理」です。
🔍 構成管理(Configuration Management)とは?
構成管理とは、テスト成果物(Testware)や開発成果物のバージョンや変更履歴を管理するプロセスのことです。
開発やテストの現場では日々、テストケースや仕様書、コードなどが更新されます。
その中で「どれが最新版か」「どこが変更されたのか」「誰が変更したのか」を明確にするのが構成管理の目的です。
💡身近な例でいうと…
たとえば、あなたが「テストケース一覧.xlsx」を共有フォルダで管理しているとします。
しかし、チームメンバーが同じファイルを同時に編集したらどうなるでしょうか?
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Aさんが「バージョン1.1」を保存
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Bさんが別の内容で「バージョン1.2」を保存
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結果、どちらが最新なのか分からなくなる…
このような混乱を防ぐのが 構成管理(Configuration Management)ツールやプロセスの役割です。
🧩 構成管理の4つの主要要素
構成管理には、次の 4つの要素 があります。
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要素 |
内容 |
具体例 |
|---|---|---|
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① 一意の識別(Unique Identification) |
各成果物を一意に特定できるようにする |
テストケースID(TC-001)、バグID(BUG-104)など |
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② バージョン管理(Version Control) |
各ドキュメントやコードの変更を履歴として残す |
v1.0 → v1.1 → v2.0 といった番号管理 |
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③ 変更管理(Change Management) |
承認フローを通して正式に変更を反映する |
変更リクエスト(CR)発行後にレビュー・承認 |
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④ 変更履歴の追跡(History Tracking) |
変更前後の差分を記録し、いつでも比較可能にする |
Wordの「変更履歴」やGitの「diff」機能など |
🧠 構成管理がなぜ重要なのか?
テスト活動では、多くのドキュメントやツールが連携しています。
たとえば次のようなテスト成果物は、すべて構成管理の対象となります。
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テスト計画書(Test Plan)
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テスト戦略(Test Strategy)
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テストケース(Test Case)
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テストスクリプト(Test Script)
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テスト結果・レポート(Test Report)
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不具合報告(Defect Report)
これらを適切に管理することで、
✅ 追跡性(Traceability) が確保され、
✅ 再現性(Reproducibility) を担保でき、
✅ 品質保証の透明性(Transparency) が高まります。
🧱 ベースライン(Baseline)とは?
構成管理では、「ベースライン(Baseline)」という概念も重要です。
ベースラインとは、「承認済みで公式な基準バージョン」のことです。
一度ベースライン化された成果物は、正式な変更手続き(Change Control) を経なければ修正できません。
これにより、誰でも勝手に変更してしまうリスクを防止できます。
たとえば:
✅ v1.0(ベースライン)=レビュー・承認済みのテスト計画書
🚫 修正したい場合=変更申請を提出し、承認後に v1.1 として更新
🔄 構成管理ツールの例
構成管理は手作業でも可能ですが、通常は専用ツールが使われます。
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ツール名 |
主な用途 |
特徴 |
|---|---|---|
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Git / GitHub / GitLab |
ソースコードやテストスクリプトのバージョン管理 |
開発とテスト両方で使用可能 |
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JIRA / Azure DevOps |
要件・タスク・不具合・テスト連携管理 |
CI/CDパイプラインと連携 |
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TestRail / Zephyr |
テストケース・実行結果の構成管理 |
バージョン・履歴・トレーサビリティの確保 |
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Confluence / SharePoint |
ドキュメントの構成管理 |
変更履歴・承認ワークフローが組み込み可能 |
🚀 CI/CDとの関係(自動構成管理)
近年では、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー) においても構成管理が重要な役割を果たします。
テストやデプロイを自動化するパイプラインでは、
構成管理がすべてのバージョン管理・追跡・ロールバックを支えています。
たとえば:
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Gitでコード変更をトリガー → Jenkinsが自動ビルド
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新バージョンのテスト自動実行 → 結果をTestRailに保存
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不具合があれば自動で前のベースラインへロールバック
このように、構成管理は自動テストやDevOpsの土台 とも言えます。
🧭 ISTQBシラバスにおける重要ポイント
ISTQB Foundation 4.0 では、以下の点を特に強調しています。
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構成管理は テスト計画フェーズから導入される唯一のツール である。
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テスト成果物(Test Items)はすべて一意に識別・バージョン管理・追跡される必要がある。
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構成管理が確立されていないと、テストの再現性・品質保証が崩れる。
多くの受験者が混同しやすいポイントですが、
「構成管理ツールはテスト計画段階で導入される」という点を覚えておきましょう。
✅ まとめ
構成管理(Configuration Management)は、単なる技術的ルールではなく、品質保証の基盤です。
テスト計画から実行・報告まで、あらゆる成果物を正しく識別し、バージョンを管理し、変更履歴を追跡することで、
「どの時点のどの結果が正しいのか?」を明確にできます。
💬 ポイントを再確認
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各成果物にはユニークIDを付与
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バージョン管理で変更履歴を明確に
-
承認済み文書はベースライン化
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構成管理ツールを活用し、自動追跡
構成管理を理解することは、ISTQB試験対策だけでなく、現場の品質管理にも直結します。
ぜひ日常のプロジェクトでも意識して取り入れてみましょう。


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