ISTQB Foundation(CTFL)試験の対策として、公式サンプル問題を使いながら「どのように考えて正解を導くか」を解説します。
この記事では、5つのサンプル問題をもとに、解答の根拠と「消去法(elimination strategy)」の使い方を具体的に説明します。
🎯 試験に挑む前の心構え
CTFL試験では、単に知識を暗記するのではなく、「テストの目的」や「原則」を理解し、選択肢を論理的に判断する力が求められます。
特に重要なのは次の3点です。
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問題文を正確に読むこと。
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迷ったら消去法を使うこと。
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1問にこだわりすぎず、時間配分を意識すること。
第1問:テストの目的として正しいのはどれか?
次のうち、有効なテストの目的を表しているものはどれですか?
選択肢:
A. システムに未修正の欠陥がないことを証明する
B. 本番リリース後に故障が発生しないことを証明する
C. テスト対象のリスクレベルを下げ、品質への信頼を高める
D. 入力のすべての組み合わせを網羅的にテストする
解説:
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A・Bは「証明」することを目的としていますが、テストの目的は**“欠陥がないことを証明する”ことではありません。**
欠陥があっても、リリースの判断はリスク受容によって行われます。
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Dは「網羅的テスト」を意味しますが、“全ての組み合わせをテストすることは不可能”(テスト原則1)です。
✅ 正解:C
→ テストの目的は「リスクを下げ、品質への信頼を高める」ことです。
補足例:
たとえば金融システムでは、すべてのトランザクションを検証することは不可能ですが、テストを通して「重大なリスクがない」状態にすることが目的になります。
第2問:テスト活動が成功に貢献する例はどれか?
次のうち、テストの成功に貢献する活動の例を示しているものはどれですか?
選択肢:
A. テスターが開発ライフサイクル全体に関与する
B. テスターは開発中、開発者を邪魔しないようにする
C. テスターがエンドユーザーと協力して欠陥報告の質を高める
D. 認定テスターは非認定テスターより優れたテストケースを書く
解説:
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Aは非常に重要です。
テスターが要件定義・設計・実装など各フェーズに関与することで、早期に欠陥を検出できます。
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Bは誤り。コミュニケーションを避けるのは逆効果です。
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Cは一見よさそうですが、「欠陥報告の質の向上」は本質ではありません。
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Dは根拠がなく不適切です。
✅ 正解:A
補足例:
アジャイル開発でテスターがスプリント計画段階から参加することで、要件の誤解を防ぎ、後工程での手戻りを減らせます。
第3問:回帰テストで新しい欠陥が見つからない理由
回帰テストで欠陥が見つからなくなったときに懐疑的になる理由を説明するテストの原則はどれですか?
シナリオ:
インクリメンタル開発で何度もリリースを重ねているが、同じ回帰テストで新しい欠陥が見つからない。マネージャーは喜んでいるが、あなた(テスター)は不安を感じている。
考えられるテスト原則:
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A. テストは使い古される(Tests wear out)
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B. 欠陥は集中する(Defects cluster together)
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C. エラー不在の誤謬(Absence-of-errors fallacy)
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D. 網羅的テストは不可能(Exhaustive testing is impossible)
✅ 正解:A – テストは使い古される
解説:
同じテストケースを繰り返すと、新しい欠陥を検出できなくなることがあります。
つまり、テストスイートを定期的に見直すことが必要です。
補足例:
毎回同じシナリオだけを回していると、仕様変更による新たなリスク領域を見逃す危険があります。
第4問:テスト分析に該当する活動はどれか?
次のうち、**テスト分析(Test Analysis)**に該当する活動はどれですか?
選択肢:
A. 支払い機能のテストに8%の工数を見積もる
B. チームが「支払いを複数ユーザー間で正しく分割できるか」をテストすべきと決定する
C. 最小支払額の境界値分析を用いてテストデータを作成する
D. 実際の結果と期待結果の不一致を分析する
✅ 正解:B
解説:
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Aは「見積もり」=テスト計画フェーズ
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Cは「テスト設計」フェーズ
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Dは「テスト実行」後の分析
Bは、**「何をテストするか」を決める段階(テスト分析)**に該当します。
第5問:テストアプローチに大きく影響する要因はどれか?
次のうち、テストアプローチに大きな影響を与える要因はどれですか?
選択肢:
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開発ライフサイクル(SDLC)
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過去プロジェクトで検出された欠陥数
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製品リスク
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規制要件
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テスト環境のセットアップ
✅ 正解:1, 3, 4
解説:
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SDLC:アジャイルやウォーターフォールなどのモデルによってテスト手法が異なる
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製品リスク:高リスク領域は重点的にテストを行う
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規制要件:医療・金融など、法的基準に準拠したテストが求められる
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一方で「過去の欠陥数」や「テスト環境」は、アプローチには直接影響しません。
💡 試験で役立つ消去法のコツ
ISTQB試験では「確信がない問題」も多く出題されます。
その際は次の手順を意識しましょう。
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明らかに間違っている選択肢を除外する。
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残った2択で、文脈や原則に最も合うものを選ぶ。
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分からない問題に時間をかけすぎず、後で戻る。
この戦略により、限られた時間で正答率を最大化できます。
🧭 まとめ:CTFL試験の本質は「理解力」
CTFLでは単なる暗記ではなく、「なぜその答えになるのか?」を理解することが最も重要です。
今回紹介した5問は、その考え方を身につける絶好の例です。
次回の記事(Part 2)では、さらに応用的なサンプル問題を扱い、テスト設計技法や原則の応用を深めていきます。


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