【ISTQB /JSTQB ALTM 3.0解説】テスト管理におけるメトリクスとは?わかりやすく解説|Chapter 2.1 Metrics for Test Management

JSTQB Advanced Level Test Management 3.0

はじめに

ISTQB Advanced Level Test Manager シラバス Chapter 2「Managing the Test Product(テスト成果物の管理)」の最初のトピックが 2.1 テストメトリクス(Test Metrics) です。

テストメトリクスは、テストプロジェクトの進捗や品質、プロセスの有効性を“数値化して見える化”するための指標です。

テストマネージャーにとって、メトリクスの理解と活用は欠かせないスキルの一つです。


1. テストメトリクスとは?

メトリクスとは、「測定値」や「評価指標」のことです。

テストにおけるメトリクスは、プロジェクトや製品、プロセスの状態を定量的に把握するために使われます。

有名な管理の格言にこうあります。

“What gets measured gets done.”(測定されるものは実行される)

つまり、測定されない活動は見逃されやすく、改善もされにくい ということです。

だからこそ、テスト活動においても適切なメトリクスを定義することが重要なのです。


2. テストメトリクスの主な種類(P³カテゴリー)

ISTQBシラバスでは、メトリクスを以下の3つのカテゴリに分類しています。

(以前は「People Metrics(人に関する指標)」も含まれていましたが、最新版では除外されています)

カテゴリ

概要

具体例

① プロジェクトメトリクス(Project Metrics)

テスト進捗や計画達成度を測定する指標

・テストケース実行率・テスト合格率/失敗率・スケジュール遵守率

② プロダクトメトリクス(Product Metrics)

製品の品質やリスクを測定する指標

・欠陥密度(Defect Density)・リスク軽減率・残存リスクの割合

③ プロセスメトリクス(Process Metrics)

テストプロセスの効率・有効性を測定する指標

・欠陥検出率(Defect Detection Rate)・テストプロセス効率・レビュー効果率(Defect Removal Efficiency)

💡 People Metrics(人材メトリクス)

以前はチームスキルやメンバーの生産性評価も含まれていましたが、個人の評価目的に使うのは非倫理的であるため、現在のISTQBシラバスでは除外されています。ただし、チーム全体の教育・採用・スキルギャップ分析には役立ちます。


3. テストライフサイクルにおけるメトリクス活用の流れ

メトリクスはテストプロジェクトの3つのフェーズで異なる役割を持ちます。

フェーズ

活動内容

メトリクスの目的

① 計画(Planning)

テスト目標をもとに、どのメトリクスを使うか決定する

「何を測るか」を明確化する

② 監視と制御(Monitoring & Control)

定義したメトリクスを定期的に測定し、進捗を管理する

問題の早期発見と是正

③ 完了(Completion)

最終的な結果を報告し、今後の改善に活かす

実績と成果の評価

4. 代表的なテストメトリクスの例

以下は、ISTQBの講義で紹介されている代表的なメトリクスと、その活用タイミングです。

メトリクス名

監視&制御

テスト完了時

説明

要件カバレッジ(Requirement Coverage)

どの要件がテストされたかを追跡。完了報告にも使用。

プロダクトリスクカバレッジ(Product Risk Coverage)

リスクがどの程度テストで網羅されたか。

コードカバレッジ(Code Coverage)

開発中の品質測定に使用。完了時には報告不要。

計画対実績(Actual vs Planned)

スケジュール・工数・コストの乖離を管理。

テストケース実行状況(Pass/Fail/Blocked)

実行率と結果を可視化。未実施・スキップ理由も記録。

解決済み欠陥率(Resolved Defects Rate)

残存バグの可視化に役立つ。

自動化テスト進捗(Automation Progress)

自動化計画の達成度を報告。

テストコスト(Cost of Testing)

実行中にのみ監視される。終了後は不要。

5. 実務での活用例

例①:進捗遅延の早期発見

「テストケース実行率」が計画より20%低下している場合、

→ テスト環境の不具合やテストデータ不足が原因かもしれません。

→ メトリクスをもとに早期是正対応が可能になります。

例②:品質改善へのフィードバック

「欠陥検出率」が低い場合、

→ テスト設計段階の品質が不十分か、テストスコープが限定的な可能性があります。

→ 次フェーズでのテスト技法見直しに繋がります。


6. 試験対策ポイント(ISTQB Test Manager)

ISTQB試験では、メトリクスが

  • 「どのフェーズで使用されるか(Monitoring / Completion)」

  • 「どのカテゴリに属するか(Project / Product / Process)」

    を判断させる問題が出題されます。

例題

「Actual vs Planned Cost of Testing」は、どの段階で使用されるか?

👉 答え:Monitoring(監視中のみ)


まとめ

テストメトリクスは単なる数字ではなく、

“意思決定を支える客観的データ” です。

テストマネージャーはプロジェクトの目的に応じて

  • 適切なメトリクスを選定し、

  • 定期的に監視し、

  • 結果を基に改善につなげる

    ことで、テスト活動全体の品質と透明性を高めることができます。

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