ISTQB Test Management v3.0の第2章「テスト成果物の管理」では、テスト活動をどのように監視(Monitoring)・コントロール(Control)・完了(Completion)するかが重要なテーマとして扱われています。
今回はその中でも、「2.1.2 Monitoring, Control and Completion(監視・コントロール・完了)」について、わかりやすく解説します。
■ テストメトリクス(Test Metrics)とは?
テストメトリクスとは、テストの進捗・品質・効果を数値化して可視化するための指標です。
テストマネージャーは、これらのメトリクスを通じて「今どれだけ進んでいるのか」「品質は基準を満たしているか」「計画とのズレがあるか」を把握し、必要に応じて対応を行います。
主なテストメトリクスの例
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進捗指標:実施済みテストケース数/全体のテストケース数
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欠陥指標:検出された欠陥の数、重大度別の欠陥数
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品質指標:合格率、不具合再発率、欠陥密度
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コスト指標:テストにかかった時間や予算の消費率
これらを使うことで、プロジェクトの健康状態を定量的に評価できます。
■ テスト監視(Monitoring)とは?
**Monitoring(モニタリング)**とは、テスト活動の進行状況を継続的に観察し、計画との差異を検出する活動です。
言い換えれば、「テストの温度を常に測る」ようなイメージです。
具体的なモニタリングの例
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テスト進捗レポートを毎週作成し、予定と実績を比較
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欠陥トレンドをグラフ化して、品質の変化を把握
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テスト環境の稼働率をモニタリングし、遅延リスクを検出
📊 例:
「今週は予定よりテスト実行が10%遅れている」と分かれば、次のアクション(コントロール)に繋げることができます。
■ テストコントロール(Control)とは?
**Control(コントロール)**とは、モニタリングで発見した問題やズレに対して、修正・調整を行う活動です。
テストマネージャーは、データを根拠に最適な意思決定を行う必要があります。
コントロールの具体例
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優先順位の見直し:新たなリスクが発生した場合、重要度の高いテストを先に実施する
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スケジュールの調整:環境準備が遅れた場合、スケジュールを再設定する
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リソースの追加:進捗が遅れている場合、追加メンバーを投入する
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基準の再評価:再作業後に再テストが必要か判断する
🧭 例:
「テスト環境の構築が遅れているため、実行順を変えて先にモジュールBのテストを行う」といった柔軟な対応が求められます。
■ テスト完了(Completion)とは?
**Completion(テスト完了)**は、テスト活動が一段落した際に、成果と教訓を整理・報告するプロセスです。
テスト完了の目的
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成果のまとめ:テストケースの実行結果や欠陥分析を集約
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ナレッジ共有:教訓や改善点をドキュメント化(次回のプロジェクトに活かす)
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品質報告:ステークホルダーに品質の現状を可視化して報告
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環境のクリーンアップ:テスト環境の停止やデータ整理
実施タイミング
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各テストレベルの完了時(例:システムテスト終了)
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各イテレーションの終了時
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製品リリースまたはメンテナンスリリース後
📘 例:
プロジェクト完了時に「テスト実施率90%、主要欠陥すべて修正済み」といった報告をまとめることで、関係者が次のステップへスムーズに進めます。
■ メトリクスを活用したテストマネジメントの全体像
テストメトリクスは、プロジェクトのあらゆる段階で活用されます。
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フェーズ |
活動内容 |
使用する主なメトリクス |
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計画(Planning) |
テスト目標・基準設定 |
スケジュール、リソース見積もり |
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監視・コントロール(Monitoring & Control) |
進捗確認・軌道修正 |
実施率、欠陥数、コスト消費率 |
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完了(Completion) |
成果報告・改善提案 |
合格率、未解決欠陥数、教訓集 |
このように、**メトリクスは「データで判断するテストマネジメント」**を支える重要な要素です。
■ まとめ
テストマネージャーにとって、「監視・コントロール・完了」の3つは不可欠な管理プロセスです。
メトリクスを活用して現状を正確に把握し、問題があれば即座に修正。完了後には教訓を残すことで、次のプロジェクトでより高い品質を実現できます。
🔍 ポイントまとめ
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モニタリング:進捗や品質を継続的にチェック
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コントロール:ズレを発見したら、即座に調整・改善
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コンプリ―ション:結果をまとめ、学びを次へつなぐ
データドリブンなテスト管理こそ、優れたテストマネージャーの証です。

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