【ISTQB /JSTQB ALTM 3.0解説】テストプロセス改善とは?IDEALモデルで学ぶ効果的な改善ステップ

JSTQB Advanced Level Test Management 3.0

ソフトウェアテストにおいて「より効率的で品質の高いテストを実施する」ためには、

単にテストを繰り返すだけでなく、プロセス自体を改善していくことが欠かせません。

今回の記事では、**ISTQB Advanced Level Test Manager(テストマネージャ)**の

シラバス第1章「テスト活動のマネジメント」に登場する

**1.5 テストプロセス改善(Test Process Improvement)**の中から、

特に重要な「IDEALモデル」をわかりやすく紹介します。


🧩 テストプロセス改善とは?

まず、「テストプロセス改善」とは何でしょうか。

簡単に言うと、現在のテストのやり方を分析し、課題を見つけ、より良い方法に変えていく活動です。

例えばこんなケースがよくあります。

  • バグ報告の手順がチームごとにバラバラで、情報が共有されにくい

  • 回帰テストに毎回時間がかかりすぎている

  • 不具合の再現率が低く、原因調査に時間がかかる

こうした課題を放置すると、開発のスピードも品質も下がってしまいます。

だからこそ、定期的にプロセスを見直し、改善することが重要なのです。


⚙️ IDEALモデルとは?

テストプロセス改善の代表的なフレームワークが、IDEALモデルです。

IDEALは以下の5つのステップの頭文字から構成されています。

ステップ

内容の概要

I – Initiating(開始)

改善の目的と範囲を明確にする

D – Diagnosing(診断)

現状を分析し、問題点を特定する

E – Establishing(計画)

改善計画を立て、優先順位を決める

A – Acting(実行)

改善策を実施し、効果を測定する

L – Learning(学習)

成果と課題を振り返り、次の改善に活かす

この流れは、品質管理の基本サイクルであるPDCA(Plan-Do-Check-Act)と似ていますが、

より組織的かつ継続的な改善活動に適しています。


🏁 ステップ1:Initiating(開始)

最初のステップでは、改善の目的・範囲を明確にします。

つまり、「なぜ改善するのか?何を改善したいのか?」をチーム全体で合意します。

🔍 例

  • 「テストケースの重複を減らして工数を20%削減したい」

  • 「レビュー漏れによるバグを半分に減らしたい」

この段階では、関係する**ステークホルダー(開発者、QAリーダー、PMなど)**を巻き込み、

改善による影響範囲や優先度を整理しておくことが大切です。


🔎 ステップ2:Diagnosing(診断)

次に、現状を分析して課題を洗い出します。

この段階では、例えば次のような方法を使います。

  • テストレポートや欠陥データの分析

  • レビュー記録・テスト実績表の確認

  • チームメンバーへのヒアリングやアンケート

🔍 例

  • バグの60%が仕様理解不足に起因 → 「レビュー工程の見直しが必要」

  • テスト環境構築に平均3日かかる → 「自動化や仮想環境導入を検討」

診断結果は、後の「改善計画(Establishing)」の基礎となります。


📝 ステップ3:Establishing(計画)

ここでは、改善のための具体的なアクションプランを作成します。

計画に含める項目の例

  • 改善目標(KPI)

  • 実施担当者・スケジュール

  • 必要なリソース(時間・予算・ツール)

  • 効果測定方法(定量・定性の両面)

優先順位づけ(Prioritization)

すべての課題を一度に解決することはできません。

そこで、ROI(投資対効果)・リスク・プロジェクト戦略との整合性を考慮して、

最も影響の大きい改善項目から着手します。


🚀 ステップ4:Acting(実行)

計画を立てたら、実際に改善施策を実行します。

具体例

  • 自動テストツールの導入とトレーニングを実施

  • テストレビューのチェックリストを作成し、運用開始

  • スプリントごとに振り返り会(Retrospective)を導入

実行の際は、**パイロットプロジェクト(試験導入)**を行い、

効果を確認してから全社展開するのが安全です。

また、**改善の効果を測るメトリクス(工数削減率、欠陥検出率など)**を記録しておくことで、

次の「学習」ステップで役立ちます。


💡 ステップ5:Learning(学習)

最後に、改善活動の結果を振り返るフェーズです。

チェックポイント

  • 期待した効果は得られたか?

  • 想定外の副作用はあったか?

  • 今後も継続すべき改善はどれか?

この学びを次の改善サイクルへつなげることで、

**継続的なプロセス改善(Continuous Improvement)**が実現します。

🔍 例

  • 改善効果が大きかった活動を標準プロセスに組み込む

  • 効果が出なかった施策は、原因を特定して再設計


🧠 IDEALモデルは組織にもチームにも使える

本来IDEALモデルは、組織全体の改善活動を支援するために設計されていますが、

チーム単位・プロジェクト単位でも適用可能です。

特にAgile開発では、スプリントごとのレトロスペクティブ

「Diagnosing」や「Learning」に相当します。

また、自動車業界の**Automotive SPICE (A-SPICE)**のように、

プロジェクト単位で改善を評価・認定する仕組みもあります。


✅ まとめ:IDEALモデルで“改善を習慣化”する

テストプロセス改善は「一度やって終わり」ではありません。

IDEALモデルを継続的に回すことで、組織やチームの成熟度を高めることができます。

IDEALの5ステップまとめ

  1. Initiating – 改善の目的と範囲を決める

  2. Diagnosing – 現状を分析し、課題を発見する

  3. Establishing – 改善計画を立てる

  4. Acting – 改善策を実行する

  5. Learning – 成果を振り返り、次へつなげる

継続的な改善こそが、品質の高いソフトウェアと信頼できるテスト文化を生み出します。

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