ソフトウェアテストの学習を進めている方へ、今回は ISTQB Foundation Level(CTFL) の章1.4「テスト活動・テストウェア・テストの役割」について解説します。
このテーマは非常に重要かつボリュームが多いため、Part 1(本記事)では「テスト活動(Test Activities)」 に焦点を当て、Part 2で残りを扱います。
テスト活動とは?(Testing Activities)
テスト活動とは、ソフトウェアの品質を保証するための一連のプロセスを指します。
テストは単なる「実行」ではなく、**計画から完了までの流れ(ライフサイクル全体)**を意味します。
ISTQBでは、一般的に次の6つのフェーズに分かれています:
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テスト計画(Test Planning)
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テスト分析(Test Analysis)
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テスト設計(Test Design)
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テスト実装(Test Implementation)
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テスト実行(Test Execution)
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テスト完了(Test Completion)
各フェーズの目的と成果物(Deliverables)を理解しておくことが、テストエンジニアにとって非常に重要です。
① テスト計画(Test Planning)
テスト活動のスタート地点。ここでは以下を定義します。
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テストの目的とゴール
何を、どこまで、どのようにテストするかを明確にします。
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テストの範囲とアプローチ
手動/自動テストの割合、使用するツール、担当者の割り当てなど。
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リソースとスケジュール
必要なテスター数、期間、ツールや環境の準備。
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エントリー/エグジット基準
「いつテストを始めるか」「どの状態で完了とするか」を定義します。
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モニタリングとコントロール
進捗を数値で追跡し、ズレが発生した場合に修正する仕組みを用意します。
👉 テスト計画=「全体の設計図」。
成功するテストプロジェクトの鍵はここにあります。
② テスト分析(Test Analysis)
ここでは「何をテストするか(What to test)」を明確にします。
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テストベース(Test Basis) の分析
→ 要件書、設計書、ユースケース、コード、ビジネスルールなど、テストの根拠となる資料を精査。
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テスト条件(Test Conditions)の特定
→ 要件や仕様からシナリオ(テスト条件)を抽出。
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ドキュメントの不備を検出(静的テスト)
→ あいまい・矛盾・不完全な要件を早期に発見し、開発チームへフィードバック。
ここで得た情報をもとに、次の「テスト設計」へと進みます。
③ テスト設計(Test Design)
次は「どのようにテストするか(How to test)」を定義します。
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テストケースの作成
入力値、期待結果、前提条件などを具体的に設計。
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テストデータや環境の定義
どんなデータを使うか、どの環境で実行するかを整理。
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ツールやインフラの選定
自動化ツールやCI/CD環境をどのように構築するか決めます。
ここで設計した内容が、次の「実装フェーズ」で実際に形になります。
④ テスト実装(Test Implementation)
このフェーズでは、テスト実行のための準備作業を行います。
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テスト環境のセットアップ
テスト環境・ツール・データを実際に準備。
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テスト手順(Test Procedures)の作成
実行順序や設定方法など、手順を定義。
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テストスイートの構築
テストケースをグループ化して、効率的に実行できるように整理。
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自動化スクリプトの作成
ここで実際に自動化コードをツール上に実装します。
👉 ここまで終えれば、テスト実行の準備は万全です。
⑤ テスト実行(Test Execution)
いよいよテストを実行します。
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テストケースの実行と結果記録
期待結果と実際の結果を比較し、合否を判定。
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バグ報告(Defect Reporting)
失敗したケースについては詳細な不具合報告を作成。
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リテスト・回帰テスト
修正後に再確認し、他の部分に影響がないかチェック。
このフェーズは最も長く、テストチームの中心的な活動となります。
⑥ テスト完了(Test Completion)
全てのテストを終えた後の「まとめフェーズ」です。
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残存バグの整理・報告
修正できなかった不具合を文書化し、リスクを共有。
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成果物(Testware)のアーカイブ
テストケース、結果、スクリプトなどを保存し、将来の保守チームに引き継ぐ。
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レッスン・ラーニングの共有
プロジェクトを通じて学んだ改善点を振り返り、次回に活かします。
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テストサマリーレポートの作成
テストマネージャーが全体の成果をまとめ、ステークホルダーへ報告します。
これで1つのテストライフサイクルが完結します。
テストプロセスに影響を与える要因
ISTQBでは「テストはコンテキスト依存(Context-Dependent)」と定義しています。
つまり、プロジェクトや組織によって最適なテストプロセスは異なります。
影響を与える主な要因は以下の通りです:
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ステークホルダーの期待・ビジネス要件
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チームのスキルや経験
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プロジェクトの予算・スケジュール
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システムの複雑さやリスク
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使用する開発モデル(ウォーターフォール / アジャイル)
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利用可能なツール・環境
テストの目的は常に「ステークホルダーの期待に応えること」。
状況に応じて柔軟にプロセスを最適化することが求められます。
まとめ
本記事では、ISTQB Foundationの章1.4「テスト活動(Part 1)」を中心に解説しました。
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テスト活動は6つのフェーズで構成される
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各フェーズで目的・成果物を明確にすることが重要
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テストはコンテキスト依存であり、状況に応じて最適化が必要
次回のPart 2では「テストウェア」と「テストの役割」について詳しく見ていきます。
引き続き、テストの全体像を理解していきましょう。
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