ISTQB Foundation 4.0 の**第4章「テスト分析と設計(Test Analysis and Design)」**では、テスト技法を3つのカテゴリに分けて学びます。
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ブラックボックステスト技法
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ホワイトボックステスト技法
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経験ベーステスト技法(Experience-Based Test Techniques)
今回はその3番目、「経験ベーステスト技法」の中の最初のテクニック、
**エラ―推測(Error Guessing)**について詳しく解説します。
経験ベーステスト技法とは?
まず、「経験ベーステスト技法」とはどのようなものかを理解しておきましょう。
これはその名の通り、テスター自身の経験・直感・ドメイン知識に基づいてテストを行う手法です。
つまり、数式や明確な設計手法に頼らず、テスターが「ここはバグが出そうだ」と感じる箇所を重点的にテストします。
経験ベーステストに必要な要素
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過去の経験
過去に似たようなアプリやシステムで遭遇した不具合の知識。
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ドメイン知識
対象のシステムが属する業界の特性(例:銀行、ECサイト、医療、車載システムなど)を理解していること。
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典型的な欠陥の知識
「この分野ではよくこういうバグが起こる」という傾向を知っていること。
これら3つの知識を総合的に使って、「経験的にバグを見つける」わけです。
経験ベーステスト技法が有効な場面
この手法は、すべてのテストフェーズで使えるわけではありません。
以下のような「フォーマルなテスト技法が使いにくい場面」で特に有効です。
① 仕様書が不十分な場合
仕様があいまいでブラックボックス技法(同値分割法や境界値分析など)が適用できないとき。
また、コードも読めない状況ではホワイトボックステストも困難です。
そんなとき、経験を頼りに重要な箇所を推測してテストします。
例:
「要件書には“高速で動作すること”としか書かれていない」
→ どの操作で遅くなるか、どんな環境で不安定になるかを経験から探る。
② 納期が差し迫っている場合(タイムプレッシャー)
時間が足りず、すべての正式なテストケースを実行できないとき。
残り時間で最大限の品質を確保するために、経験豊富なテスターが「バグが出やすい場所」を優先してチェックします。
例:
リリース直前、十分な回帰テストの時間がないときに、
「過去にバグが出やすかった機能」や「新しく修正した部分」を重点的に確認する。
③ テスターが正式なテスト技法を知らない場合
たとえば、20年以上車の組み立てを行っている整備士が、新しい車両をチェックするとします。
彼らは「どの部品が壊れやすいか」を経験から理解しており、理論よりも感覚的に不具合を見抜く力を持っています。
これはまさに「経験ベーステスト」の典型です。
エラ―推測(Error Guessing)とは?
● 定義
エラ―推測(Error Guessing)とは、
過去の経験や直感をもとに、「どんなエラーが起こりそうか」を推測してテストを行う技法です。
たとえば、以下のような「ありがちなバグパターン」を想定します。
✅ 具体例:ログイン画面のエラ―推測
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ユーザー名やパスワードに空白を入力した場合にどうなるか?
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**特殊文字(@, #, $)**を入力するとエラーが出る?
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連続してログイン失敗した後、アカウントロックが正しく動作する?
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セッションタイムアウト後に再ログインできるか?
これらは仕様書に明記されていなくても、
「過去に似たような不具合を見たことがある」という経験から推測できるケースです。
エラ―推測はどのように行う?
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必ずしも事前にテストケースを文書化する必要はありません。
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テスターが実際にシステムを触りながら、「怪しい」と思う操作を試していくスタイルでもOKです。
ただし、後で再現できるように、**簡単なメモ(高レベルのテストケース)**を残しておくのが望ましいです。
フォールトアタック(Fault Attack)とは?
エラ―推測を体系的に行うアプローチを「フォールトアタック(Fault Attack)」と呼びます。
通常のテストは「バグを探すために機能を確認する」ものですが、
フォールトアタックでは「どんなバグがあるかを予想して狙い撃ちする」という違いがあります。
例:
「この入力欄では以前、桁数制限のチェック漏れがあった。今回も同じ問題があるかもしれない」
→ わざと長い文字列を入力してクラッシュを確認する。
エラ―推測の利点
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形式的な手法では見逃すような隠れたバグを発見できる
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テスターの知見を活かして実践的な品質保証ができる
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結果的に「発見できなくても安心感を得られる(信頼度向上)」
つまり、**「バグが見つかっても見つからなくても損はない」**という、
プロジェクトにとって非常に価値の高いアプローチなのです。
まとめ:エラ―推測は経験がカギ!
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項目 |
内容 |
|---|---|
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カテゴリ |
経験ベーステスト技法 |
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手法名 |
エラ―推測(Error Guessing) |
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主な目的 |
テスターの直感や経験で、潜在的なバグを推測して発見する |
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適用タイミング |
仕様が不明確なとき、時間がないとき、形式的手法が使えないとき |
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補足 |
経験ベーステストは形式的手法を補う手段として使うのが理想 |
さいごに
「エラ―推測」は、単なる「勘」ではありません。
長年の経験・知識・直感を総動員して、ソフトウェア品質を守るプロフェッショナルの技術です。
ISTQB試験では「経験ベーステストはいつ、どのように使うか?」を理解しておくことがポイントになります。
エラ―推測を使いこなせば、形式的テスト技法では拾えない不具合を発見でき、
より実践的で効果的なテストができるようになります。



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